だまされかけた?ネットの出会いとエッチな恋愛の罠

大学生になりたての頃の話です。

 

高校が女子高だったので、大学での男の子の多さにとまどうばかりで、彼氏が欲しいのに合コンにもなかなか参加できずにいました。

 

授業についていくために、ネットでの情報収集も多くしていましたが、そこからある研究分野のサイトに入り込みます。ちょっとした掲示板のコーナーがあって、そこでかなり専門的なアンケートを配布している人を見かけました。

 

私の目指していた分野とは違うけど、答えられる内容だったので送信。すぐにお礼メールがあり、そこから打ち解けて頻繁にメールをやりとりするようになりました。

 

彼は超有名な大学の博士課程で、プロフィール写真も知的だし、使う言葉もなんだか洗練されている。まさに私が欲しかった大人の恋人のイメージそのもの。密かに憧れを抱くようになり、ある時「会ってみない?」という話になりました。

 

彼の町はやや遠方でしたが、私はちょっと冒険がしたかったので、新幹線に乗りました。待ち合わせは彼の大学で、私は「大人の恋人」にもつり合うよう、背伸びして少しセクシーなファッションをしていきました。

 

やってきた彼は、落ち着いたレザージャケットが良く似合う、すらりとした知的青年ふう。
夕方、暮れかかる構内(観光名所でもあります)をざっと案内してくれたあと、食事に誘ってくれました。

 

行き先は落ち着いた高級中華レストラン。お酒も入り、私たちはぐっと打ち解けて、店を出る時に私が腕に手をからめると、彼も自然に肩を抱き寄せました。

 

と、入った時には降っていなかった雨が、本降りになっていました。

 

暗がりにあるバス停に入って雨宿りするつもりが、果てしないキスの嵐に。

 

顎から胸元へ、さらにカーディガンの下へと、彼の手が入ってくるうちに、

 

「どこかへ行かない?」と自分から提案していました。

 

その瞬間、丘の上へとたどり着きつつあった彼の指がぴたりと止まりました。

 

「…ごめん、今日は帰らないと、…両親が心配するから」。

 

… …はい???

 

ぽかんとした私に、気まり悪げに言うには、両親と同居しているので、女の子を連れて帰ることも、またどこかへ外泊することもできないと言うのです。

 

ネットサイト上のイメージに酔って、私が作り上げていた(そして、彼自身もそれを利用していたふしがあります)「大人の恋人」の仮面はがらがらと崩れ、そこには大人になりたくてイマイチなりきれていない、抜け穴だらけの男の子が、欲求不満を抑えながらしょんぼりと座っているだけでした。

 

それならそうと、正直に話してくれれば良かったのに…と、その時点から私は彼に対し『お友達』としての感情しか持てなくなりました。

 

それでも精一杯、おもてなししてくれたことは確かです。

 

「じゃあ、早く帰らなくっちゃね!今日はどうもありがとう」つとめてそう明るく言い、最後に彼の頬に小さなキスをして、私は小雨になった道を、ビジネスホテルへ向かって走りました。

 

以降、彼からは何度も「熱烈な愛のメール」が、相変わらず洗練された表現で送られてきました。が、彼自身は私の町へ訪ねてくることはなく、関係はいつしか自然消滅してしまったのです。

 

サイトを通した出会いや恋愛の話は、悪質な件もよくニュースで取りざたされますが、私の場合はかなり和やかな展開ですみました。

 

以降、ネットの中に恋愛対象を探すことはなくなりました。

 

 

【海外・30代・女性・翻訳業】